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日曜夕刻の当家の定番聴取ラジオドラマ『あ、安部礼司』は今年で13年目を迎える長寿番組だ。曲がりなりにも13年も続いたのだから人気番組といって良いだろうし、ファンも少なからず存在するようだ。

そんな同番組だが、5月の第1週から大々的に「リニューアル」した。従来は一つのテーマなりアクシンデントなりにまつわる、登場人物たちの喜怒哀楽を描くのに一時間を費やしていたのだが、現在は別々のテーマでの三本立てという形式になった。この変更に伴い、リニューアル以前に比べ、このドラマの世界観を形成していたキャラクターたちの登場時間が随分短くなってしまったし、この番組で最も濃く、かつこの番組の超現実性を一手に引き受けて来た安部の親友刈谷勇はアメリカに留学という名目で、いきなり姿を消してしまった。この番組の影の主人公とでもいうべき刈谷の退場は正直痛い。今のままの状態が続くのであれば『あ、安部礼司』というタイトルをつけておく必要がないと思えるほどの意味不明なリニューアルである。

安易に「ネット上の意見」というやつを引き合いには出したくないのだが、私の感じている違和感が個人的なモノなのかどうなのかを確認したくて、ツイッターの#abe02というハッシュタグの投稿をのぞいてみたら、私と同じような違和感を抱いている人ばかりだったので、安心した（笑）。

13年目を迎え、作っている方にもマンネリ感が出て来てしまったであろう事は想像に難くない。フジテレビが長年続いた番組を次々と終了させるなど「終わり」が一つのトレンドであるという見方もできなくはないし、リニューアルを行って新機軸を打ち出そうという心意気は買うのだが、いかんせん、今までのこの番組の世界観と違いすぎるドラマが展開されるので、現段階では馴染むことが難しい。

先に述べた刈谷勇の突然の退場もさることながら、否定的な意見の多くは登場人物に感情移入できないことに由来するのではないか？典型的なのが、礼司の妻、優がドラマの展開の中で、これまた突然失踪してしまったのに礼司が変に落ち着いてしまっていること。今までの安部礼司であれば何を置いても優を探すために東奔西走しただろうし、その最中に発せられる彼の様々なセリフには共感させられるものが多く、そこがこのドラマの一番の妙味だったのだと思う。今作に関しては、手間のかかる時期を迎えた二人の子供の世話を焼かなくてはならない状況下にあるとはいえ、心当たりのある場所を探し回るでもなく、自分の両親や優の両親、後輩の飯野っす君や上司の大場部長に、相談の一つもしないで、ただ家で思い悩んでいるだけ…。

一般常識で考えても、関係各者には状況を報告するだろうし、警察に捜索願いの一つも出しもおかしくない状況だと思うのだが、アラというか穴というかツッコミどころというか、そういうところばかりが耳に入ってきてしまい、共感できるどころか残るは違和感ばかりなり、という状態で、気の重い日曜の夜を迎えざるを得ないという状態なのだ。

一度方針が決まってしまった以上、しばらくはこの状態が続くのだろうが、古くからのファンが離れていってしまう前に、製作陣は、もう一度『あ、安部礼司』という番組の魅力が一体どこにあったのかについて、深く考えてみて欲しい。

俗に、築城三年落城三日などという。番組継続13年、打ち切り三ヶ月なんてな事態にならないことを望みたい。