ニノ 頂点は、立ち止まらない。

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変更になった会場は原宿の表参道ヒルズ。

 

その一角で、智くんが思いを込めて描いた、大切な絵でいっぱいにして、

たくさんの人に見て貰うことになった。

 

今日は、午前中は松本さんのところで、最終打ち合わせだったはず。

 

朝、俺が出勤するときに、そう言ってた。

 

ここ１ヶ月は、行ってらっしゃいのkissもしてなかったのに、今朝は、

『翔くん』って、俺を手招きして呼んだと思ったら

 

『行ってらっしゃい』の言葉の後に、

 

ちょっと背伸びして、智くんがkissをした。

 

俺があっけにとられて、動けないでいると

 

『ほら、遅れっぞ！！』

 

そう言って、俺の背中を押して、俺を玄関から出して

 

『あと少しだけ我慢してな。もう少しだかんな。』って、送り出してくれたんだ。

 

昼休みにスマホを見たら、智くんからLINE。

 

『今、帰ってきたよ。

お昼は松本のおじさんと、潤君と、蕎麦食べた。

これから、最後の１枚を描くね。』

 

『翔くん、お仕事、頑張ってな。おいらも頑張る！！』

 

♡が飛んでるスタンプと

 

『大好き～！！』の文字付スタンプが揺れてた。

 

『頑張って！！描き終わって観れるの、楽しみにしてる。』

 

『俺も、愛してるよ。』

 

『早くたくさんkissして・・・し・た・い。』

 

俺もLINEを送った。

 

智くんのLINEのせいか、今日の仕事は凄く順調に終わった。

 

夜勤の社員との引継ぎも順調で、ニノが

 

『鍵は私が締めますから、先にでてください。大ちゃん、最後の追い込みですよね。翔さん、料理はできないけど、夕飯を買っていくことはできるんだから。

大ちゃんに連絡して、早く行ってください。』

 

『ニノ・・・なんで、最後のって知ってるんだ？』

 

『雅紀が、潤君から聴いて、私に“翔ちゃんに言ってね！！”って来たんです。

だから、今日、大ちゃんに夕飯の準備させちゃダメですよ。』

 

『お、おおう！わかった！！サンキューな、ニノ。』

 

 

俺は、智くんにLINEと・・・電話を入れた。

 

智くんを呼んでる音がする。

 

５回、６回、７回・・・１０回・・・

 

これは、集中して描いてるな。

 

電話を切って、LINEを確認する。

 

電話をする前にスタンプを送ってたけど、既読はついてない。

 

『智くん、絵は順調？

今日は俺が夕飯、買って帰るから。

まだ支度してなかったら、しなくていいからね。』

 

『もう、夕飯の支度が済んでるなら、俺、２人前食べるし、

明日の弁当にするから、心配無用だからね。』

 

『プリンも買って帰るからね。』

 

 

暫くして、LINEの通知音がなって・・・俺を呼ぶ智くんの聲がした。

 

『翔くん！！ごめん、おいら気づかなくて！！』

 

『絵、描いてて・・時間、遅くなって・・・夕飯・・・』

 

『夕飯はいいんだよ。LINE観たでしょ。もう買ったから。家に向かってるよ。』

 

『翔くん・・・ありがとう。』

 

『ふふ、プリンも買ったからね。夕飯はホットもっとの弁当だけどさ（笑）』

 

『そしたら、おいら、今からお味噌汁作って待ってる。』

 

『絵は、いいの？　描き終った？』

 

『うーん、まだだけど・・・気分転換！！』

 

『翔くんと・・・少しゆっくりしたい。』

 

『さ、智くん！！』

 

『安全運転で帰ってきてな。』

 

『う、ううん。』

 

智くんは電話を切って、俺は安全運転で車を走らせた。

 

『翔くんと・・・ゆっくりしたい・・・』

 

最後の１枚を描き上げるために、俺は智くんに元気を注入しよう。

 

そう心に決めて、エレベーターで部屋に向かった。