sweetさまざまな種類と豊富なラインアップ

飴村乱数(cv.白井悠介)

ずっと、ずっと友達だって。

大人になっても友達だよって言ってたの。

ボクは忘れてないよ？

ボクたちは、ずっとずっと

ずううううううっといちばんの友達だよって

約束したの、ボクは覚えてるよ。

「あっっっつ～！」

会社を出たところでネクタイを緩めた。

今日は大事な会議があって、猛暑日だって言われてんのにジャケットにネクタイ着用。

このクソあっついのに、って文句は飲み込んで、無理難題ばっかりふっかけるオヤジにも笑顔でサラリと対応して。

我ながら大人になったなぁ、なんて思ってみたりして。

ガッツリ残業して来たってのに、既に日はとっぷり暮れているっていうのに、ビルの間を吹き抜ける風は熱風と言っていいほどの温度だった。

「また蕎麦にするかなぁ……」

歳も歳だし、色々と食事に気を遣わなきゃって思うけど。暑いし、とりあえず何か入れときゃいいよなって、そうとしか考えられない。

早く結婚しろだのなんだの、周りの声や親からのプレッシャーもあったりしたけど、仕事優先の俺に愛想をつかして、カノジョから別れを切り出されたのは、去年の夏の終わりだったっけ。

いちいち突っかかってくるカノジョの存在が正直めんどくさくて、別れ話にほっとしたとか、なかなか最低なヤツだな、って自分でもわかってるけどさ。

その後は特に出会いもなく、ただ、家と会社を往復して、たまに気の置けないヤツらと飲みに出かけて、ふらりとひとりで旅に出たりとか、それなりに楽しい毎日を過ごしていたと思ったのに……

こんな蒸し暑い日に、真っ暗なサウナみたいな家に帰るのかと思ったら、ため息しか出ない。

「帰りたくねぇなぁ……」

ため息をついたら、息苦しい熱気の温度と湿度がさらに上がったような気がして、ネクタイを首から引き抜きながら空を見上げた。

その視界の隅に、見慣れない看板が見えて立ち止まる。

「あんな所に店あったんだ……」

なにかに引き寄せられるように、看板の前まで歩いていって足を止めた。

「『Secret base』だって」

看板に書かれた文字を読んで、懐かしい景色を思い出すなんて、俺もすっかりおじさんじゃんって苦笑する。

「カフェって書いてある、よな」

昨日も蕎麦だったし、今日は何か違うものを食べた方がいいよなって、自分に言い訳するように呟いて、緑色のドアにかけられた『OPEN』と書かれた小さな札を確認してから、そっとドアを開けた。