月明かり テスト、テスト、そしてテスト。
N side
チリン…チリン
closeの札が掛けられたドアを開くとラフな格好の潤くんが奥から顔を出す
「あっ…カズいらっしゃい!」
「ニノちゃんっ!いらっしゃい!」
と…後ろからうるさい声も…
「…潤くんと2人で話したいんですけど…」
「えー!いいじゃん、最近あんま3人で会えなかったしさ…ダメ?」
「カズ、俺も3人でお話したいなぁ?」
…うっ…2人のうるうるした瞳が…
仕方ないな…
「で…どうしたの?」
まぁくん特製のハンバーグを食べながら潤くんがキョトンとした顔で尋ねる
「…潤くんさ…前気になる人いるって言ってたでしょ?」
「…っ///…気になるって…いうか…その…」
慌ただしく動く目線の先には綺麗に型にはめられたスーツ
どう見てもひとつだけ特別感のあるそのスーツに目を向けながら…
「この…人?」
「う…や、別にっ///」
泣き出しそうなぐらい目を潤ませ顔を赤らめている潤くんにちょっと申し訳なくなってくるけど…
もうちょっと我慢して?
あと少し…踏み出せばきっと…
席を立ってそのスーツの前に立つ
アンティーク調に縁取られたタグには綺麗な文字でその人の名前が書かれていた
櫻井 翔
「櫻井翔さん…かぁ…」
「カズっ…!…それは…その…」
「ちなみにこの人、俺の上司ね?」
「…ふぇっ…?」
「まぁくんの高校の先輩でもあるけど」
「…っえ?…ええええっ?!」
「んふふ…」
「くふふ…」
あ、固まってる。かわいい。
「え…あ…えぇ?」
「紹介…してあげましょうか?」
「や、そんな…俺なんか…」
「いいの?このまま会わなくなって。このスーツ受け取ったらもうお別れだよ?」
「…っ…」
「本社、都内にあるっていっても今の会社より遠いからここら辺来ることなくなるよ?」
「…だって…俺はただの店員で…」
「翔ちゃん嬉しそうでしたよ?…潤くんに会えて」
「え…櫻井さんが…?」
好きだってことは内緒ですけどね。遠慮がちな潤くんにはこれぐらい言ってあげた方がいいでしょ
「どう?…もっと話してみたくない?」
「…は…なしたい…」
「ふふっ、じゃあ早速金曜日の夜3人でご飯行きましょ」
ほら、翔ちゃん
舞台は整えてあげましたよ?
後はあなた次第ですから
「いいの…?カズ、ありがとう…」
「え?3人て…ちょっと!俺は?!」
「まぁくんはいーの」
「ニノちゃ~ん…」
「ふふ…カズはまぁに素直になれないよね?」
「うるさいですっ…///」
月明かりに照らされる翔ちゃんのスーツ
これを着て…今年の春から新しい職場で頑張るのか
潤くんの温かさが伝わってくるようなそのスーツが少し羨ましく思えた
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読んでくださってありがとうございます!
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